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Vol  13
花ビジネス「三方一両得」



今やネットで花の仕入れができる。
これで時間の課る煩わしい花のセリ場からもおさらばだ、と花屋さんは喜んだ。
パソコンの取引画面を覗き込むと上場品目の一覧。
見慣れた産地の品目が並んでいる。

「むっむっ…・前回のセリ価格より5~10円程度安い。」
「なんだ、セリで買うよりネットで買った方が得じゃないか」と花屋さん
思う。そして、必要本数を入力して注文をクリック。後は引き取るだけで
ある。便利で安い。めでたしめでたし。とまあ、こんな会話をよく聞く。
ネット取引を開始したころのお花屋さんは大体がこういった感想を持って
いるのではないだろうか。

また、ネット取引きを奨励する花市場も表面上は似たような言い分では
ないだろうか…・。



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そこで、このネット取引の流れについて花業界40年というある東京の花商
に聞いたところ、興味深い、成るほど筋が通っているというお話が聞けました。その中で今回のテーマであるネット取引にも言及していますので書いてみます。

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 花商:「花市場は苗が売れない売れないと言うけれど、そんなこと当たり前じゃね~か、だってよ、どこに植えるってぇ〜の?4月の東京じゃ、小さな庭やマンションのテラスは、たくさんのパンジーや他の花が綺麗に咲き誇ってるというのに、その花を引っこ抜いてよ、新しい苗なんて植えるわけねェ~じゃねぇ〜の。」


 著者:ごもっともです。


 花商:「お客は咲いてりゃ一年中だって同じ花植えてるよ。園芸の本みればコンテナガーデン・イングリッシュガーデンなんていって可愛い花を飾ったグラビア見るけど、あんなもんほんの一握りのファンがやってる事だよ。」


 著者:ふ〜ん……。


 花商:「昔は春植えのパンジーしかなかった。今じゃ10月ごろから植える秋植えパンジーだよ。そりゃ品種改良して強くなった苗は研究や技術のおかげだろうけど、また、客は喜ぶよ。長持ちばかりを優先してよ。全く売値は同じだよ。11月から5月まで約半年は咲いている。そのパンジーが高くて一苗200円だよ。お客さんは喜ぶわけだ。しかし業界はその間、売れないで苦しむ」


 著者:でも、そんな中から何かが生まれるという進歩の過程では?


 花商:「そうだよ。あんたの言うとおりだよ。しかしね。それは受け入れる
お客を増やしてから云うことだろう。大切なことは需要と供給のバランス
なんだよ。いくら品種改良して綺麗、長持ち、丈夫、という品質を上げても、
植える場所が無ければ意味ないだろう。
極端なこと言えば人口100人の村に100戸の一軒家を作るようなものだよ。
また、造花を花壇に植えてるいるようなものだよ。」


 著者:それもそうだ。


 花商:「作る側の一方的な論理で消費者の喜ぶ商品は?というものの考え方で大量に作り出された商品は余っているのよ。春はこれで、夏はこれで、秋は、冬はこれこれの花苗という考え方は生産(業界)する方の考え方なの。お客はそんなこと考えてないよ。美しく長く咲いてくれりゃそれでいいの。そんでもって安く済めば、解るかいこれが本音だよ。」


 著者:そんなもんですかねぇ〜?


 花商:「あのな、商売なんて単純なんだよ。なけりゃ売れる。ありすぎると余る(売れない)需要と供給のバランスが大切なの。」


 著者:………。(またまた出てきた。需要と供給のバランスと言う言葉)


 花商:「花業界はみんな個別で勝手なことやってんの。おれも含めて。種苗会社・生産・市場・小売と各々が利益しか考えないで勝手なことばかりやってるからこうなったんだよ。効率的な利益なんて出ないのにね。」


 花商:「面白い話しようか。今年売れた商品は次の年暴落するよ。」


 著者:なぜですか?


 花商:「そんなこと当然じゃないか。種苗会社の売りこみのチャンスだよ。前年の資料もってよ。ほらこんなに売れてますよ、と全国の農協や生産者回れば全国で作り始める。そうなるとどうなる?」


 著者:次の年、全国から同じ作物が出荷される。


 花商:「解ってきたな…。そう云うこと。そうして花市場は同じ花であふれる。そして暴落。こんな事何年続けてると思う。毎年こうなんだよ。だから需要と供給のバランスと言う考え方ははずせない。」


 著者:でも今はインターネットなどですぐにでも情報が入手できるじゃないですか。そんなこと誰が考えても解ることですよ。


 花商:「そうかな〜?根本は全く変わっていないよ。その証拠に市場のネット取引や予約相対(注文販売)がやたらと増えてきている。これは時流に適した方法論として出てきたものじゃないよ。荷があふれているから、その荷をどう価格を下げないで売るかと言う後ろ向きで仕方がなく対処している方法だよ。インターネットを使っているからといって全てが新しいなんて思ったら大間違いだよ。」「インターネットを使ってみんなが儲かるこれが進歩だよ。」

 著者:ということは生産する元はなにも変わっていないと言うことですか?まだまだ荷物はあふれてくると言うことですか?


 花商:「新品種や品質は商業の基本だから大切なことだよ。しかしねぇ〜。この考え方に凝り固まると儲けは無いという単純なことなんだよ。どんなに優れた削岩機をもっても、そこに鉱脈がなければ意味無いだろう。」


 著者:全くその通りですね。


 花商:「おれも含めて、業界人が忘れている事なんだよ。」


 著者:じゃあどうすれば売れるようになるんですか?


 花商:「売り先を増やすこと。これが先。全ての花業種が手を組んでお金を出し合って新たなマーケットを作るというコンセプトでやらなければ、個々でやっても力が分散するだけで、バランスを崩し益々価格は下がって、安売り量販店の餌食、また、バラが100本1980円でなけりゃ買わないといった客を増やすだけだよ。勘違いしないでくれよ。出荷調整やカルテル結んでなんて了見の狭い事、言ってんじゃないよ。花産業拡大しようといってんだよ。量販店や安物買いの客は本当の花の良さを解っていない。また、生産者の気持ちなどわかるはず無いものね。ちょっと高くなりゃそんな客すぐに居なくなるよ。」


 著者:でも花業界はコマーシャルが下手だし、まとまりが無い。


 花商:「ばら一本500円でもその良さが解って買う客も居ることを忘れちゃいけねぇ〜の。こういった客が花業界を支持してくれる客なんだよ。さっきも言った量販店や安さに群がる客は本当の客じゃないんだよ。また本当の花業界人じゃないんだよ。」


 著者:よくわかります。もっと本当の業界人は胸を張って誇り持って商いを行えと言うことですね。良いものなぜ良いかと言うことを宣伝する取り組みが必要なんですね。


 花商:「そういうこと。大分解ってきたじゃないか。しかし、そういった意味で流通の仲立ちをする今の花市場が情報操作と利益第一主義で量販の片棒を担いで居るようじゃ問題だよ。また、目先の存続で量販対応の商品を生産してる生産者もね。そして、世が安さを騒いでいるからといって安易に安さだけに傾注する花屋もね。」


 著者:このままじゃ自分の首を自分で絞めていると言うことですね。


 花商:「そういうこと。小泉総理が言っているような三方一両損じゃダメなんだよ。また一業者だけが利益を取るという仕組みもダメ。三方が一両得をする仕組みでなきゃね。」


 著者:そんな仕組みは出来るんですか?みんなが得する方法なんて…・。

 花商:「あるよ。」

その後延々と話は続きました。



■編集後記
前出の花商ですが、還暦を少し過ぎたお年でした。また、考え方がとてもシンプルでした。難しいことなど何も無い。みんな難しく考えて一層難しくしているだけだといった言葉が印象的でした。策に溺れるなと言うことでしょうか?



■花屋の本音トーク
ちょっと昔の話で学生のころ習った商業の基本です。そうです。「需要と供給」のことです。買う人がいるから売る人がいるという根本です。バランスのことです。

また、本来は違った意味合いなのですが同意語のように「ニーズとシーズ」という言葉が使われています。

シーズとは種です。ネタ(元)とも無理やり解釈すれば出来ます。消費者はこんなものが欲しいのではないかと言う予測です。新商品を世に送り出すために必要な考え方です。しかし、一方のニーズとは実際に消費者が必要としているものです。

この関係を見間違えるととんでもない商品を世に送りだし大損害という結果になってしまいます。業界側の一方的な施策(シーズ)の中から生み出された商品を捌くことに夢中で、そこに存在するニーズの領域(スケール)を見落としているのでは無いかと言うことです。


結論から言えば新しいマーケット作りが欠落していると言うことです。新品種の開発や価格の引き下げなどは、それはそれなりに有効な取り組みの一つですが、これだけが打開策と思うととんでもない結果が待っています。



柔道のようにあわせ技一本というルールがあれば事は簡単なのですがビジネスの世界にはありません。何が合わせ技なのかも検討がつきません。


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