| Vol 3 |
「花屋さんの年の瀬」
寿、根引き、大王、五葉、女、ナタきり、若、門、からげ、苔、蛇の目。これらの言葉から皆さんは何を連想しますか。これらはみんな松の名前です。そう日本のお正月には欠かせない正月の飾り花の基本となるものです。
その松市が先週の日曜日(9日)にありました。一年に一度のこの市は毎年12月の第一か第二日曜日に開市されます。いよいよ花屋も年末商戦へ突入したということなのですが、昨今はすべて効率という文明に推されて年末の風情のかけらもありません。まあ、せわしないということは変わりませんが、何がせわしないのかがわかりません。ただ、時間に追われているといった感じです。
ちょっと昔までの松市は、市場のせり人から若衆まではっぴ姿でした。
また、威勢良く競り落とされた松を若衆が担いで市場の中を駈け回ったものですが、今はコンピューターを駆使したセリ時計でセリ落とされ静かに進みます。これはこれで時代というものですから仕方ありません。
しかし、そんなセリ場からこんな声が聞こえてくるようじゃ問題です。
「あの松はどうやって使うのかな〜?」
「いくらで売るのかな〜?」というものです。
自分の価格いわゆる相場というものを持っていない花屋が増えています。
また、どのようにして使うかもわからない花屋が、どれが良い松で、どれがダメな松なのかなんぞ、わかるはずはありません。
昔は「俺の目の黒いうちにゃ松の仕入れは誰にもやらせねぇ〜。」という意気込みやこだわりを持った花屋の親父がたくさんいました。そんな親父の溜まり場になっているセリ場です。セリ人も生産者も市場の人もすべてが緊張感の連続です。売るほうも買うほうも、この機会を逃したら大変です。
そして、「あれは買っちゃなんねぇぞ!」「これは、買いだ!」と年配者から次世代の者へと継承されて行く場面も多く見られたものでしたが、そんな松市の情景も風情も今はあまり見ることはありません。
冷暖房完備のオークションルームはセリ人と買参人との掛け合いも無く、あるのはセリレーンを示すボタンと口数表示のボタンです。早い話がコンピューターを相手にした早押し買い物ゲームです。極論言えば、一時間前に花屋になった新参者でもボタンを押すだけの力が指先にあれば、買えるということです。これを市場側では公平な仕入れ環境と得意気に言います。私には販売効率一番の商業主義が大切な花屋の何かを無くしているようにしか思えません。
とまあ、松市の風情を書きましたが、そして一週間後、今度は千両市です。
この市も松市と同様一年に一度しかありません。この二つの市が終わったころ花屋は否応無しに年末の喧騒に取り込まれて行きます。一年で一番仕入れ金額が跳ね上がります。それはそうです。扱うアイテムが普段より数倍にもなるためです。
そうそう良くお客様に聞かれる事ですが、千両と万両の違いです。
簡単に言えば千両の赤い実は葉っぱの上につきますが、万両は葉っぱの下に垂れ下がるように付きます。ですから実が上と下という事です。
年末商戦の仕入れついてですが、地域によっては多少の違いが出てきます。あくまでも、このメールマガジン発行者が東京ということでお話をさせて頂いています。その辺を了承くださいね。
正月に良く使われる枝物と言えば、ボケ、蝋梅、赤目柳、孟宗竹、寒竹、梅、南天、しだれ柳などです。花はこの季節にあるものを使いますが、今は何でもあるといった方がいいでしょね。季節感はまったく無くなりました。特に万年青やぶっしゅかんは使う人がいなくなっています。
今は現在の風情を反映してフラワーデザイナーの発想によって奇抜で斬新な正月用のアレンジを見ることができます。別に花をこだわることは無いということです。花のある正月を迎えることが大切ということでしょう。
年々、千両や松を買い求めるお客さまは減少傾向にあるようです。好きな花で正月を迎える。これが文化というものでしょうか。いつまでも正月はおめでたい。松竹梅でといった感性はうすれているという事かもしれません。紅白歌合戦の視聴率が落ちていると同様に花の世界も変遷しているということ事でしょうね。
この辺は花を売る立場の人は時代を読む力が必要ということでしょうか。
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■花屋の本音トーク■
ここでの花屋の本音トークは私が長年聞いてきた同業者の愚痴ですが、中には鋭く時代を風刺したものもあります。そんな話を集めてみました。愚痴なんて読みたくないよ、ってな方は読み飛ばしてくださいね。そのために最後の章にしています。
それから私も僕もいっちょ投稿してみるかとご希望の花屋さん。
こちらへどうぞ。Fc2@hanadaisuki.comまた、何を勝手なことを、とお思いのお客様もこぞってどうぞ。お互いの本音トークが花の世界を良くします。匿名でも構いません。
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続編 4 ■言いたい放題のお客■
どこにでもいるものである。歩くネガティブ人間。
いつものように夕方自転車に乗って現れる。店先にぴたっと止まり自転車から降りるわけでもなく花を買うそぶりを見せるでもなく、今日一日の自分の出来事を勝手にしゃべっていくのである。店としては迷惑なのであるが、忘れたころに小額の花をお買い上げ頂いている訳であるから一応はお客様である。
「また明日から雨よ!」
「また風邪ひいちゃった!」
「横丁の___さん店閉めちゃうそうよ!」
「本当に世の中不景気らしいわよ!」
「また薬にお金がかかるわ!まったくも〜〜〜。」
とまあ、数えれば限が無いほど出てくる。偶には聞いていてうれしくなる
話を出来ないものかと思ってしまう。
本音を言えばこんな輩とは絶縁関係を構築するようにしているのだが、商売をしているわけで中々それもできない。出来ることといえば右から左に聞き流すしかないのであるが、忙しいときに限ってその時間帯を狙ったのかと思わせる現れ方であった。
続編 5 ■決断力の無いお客■
これがまた困るお客様のタイプである。
何を進めても「う〜ん???」というリアクションしか返ってこない。できるだけ不安を取り除くことに最善を尽くすのだが、中々ことは前へ進まない。じゃ、気に入ったものが無いのかと言えばそうではないらしい。あれもこれも欲しいといったそうぶりである。
その結果、売る方としてこれは〜?と思っている一番最悪のパターンの商品を購入するのである。本来はこれだけは購入しないほうが用途として正しい選択ですよとアドバイス申し上げたい心境であるが、散々説明させてあとである。
「ねぇ、これでいいかしら」と聞かれても後の言葉は決まっている。
「はい、大変結構だと思います。」「ありがとうございます。」というほか無い。
それから、これも似たようなタイプであるが、数人でやってきて「これはどうかしら」と一人が言えばもう一人が、「う〜ん?もうひとつだね?」という。その後は人数分の意見の交換で時間だけが過ぎていく。俗に言う船頭多しというものである。
もうこうなったら花屋としてほっとくしかないのである。
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