::: 悲しみに贈る花 Deuil :::
しばらくご無沙汰をしてしまいましたが、すっかり桜も終りに近づき、新緑がまぶしい季節となりました。ソメイヨシノの薄いピンク色は日本独特のもので、軽やかでなんだか嬉しい気分にさせてくれますね。パリでも春らしい桜の花cerisier(スリジエ)はあるのですが、日本で見るものよりも、八重桜のようなものが多いせいか、よく見かけるものは、ピンク色がもっと濃く、八重桜のような濃いピンクや、桃の花の色にも近いような感じです。
ちょうど私が渡仏し、一人暮しを始めたころ、近所のメトロの駅の出口に大きな桜の木があり、毎日この桜を見る度に「パリにも桜はあるんだー」とほっとした気持ちにさせてくれたものです。
前回は結婚式の花のお話をしたのですが、今回は喪の時に贈る花Deuil(ドゥイユ)についての花事情をお話したいと思います。
日本では、誰かが亡くなってしまった時のお花といえば、菊、ユリなどがその代表格で色的にも白い花ばかりが多く用いられますよね?フランスでは人が亡くなった時に贈る花の色にルールはなく、使われる花も、バラを中心にアマリリス、チューリップなど季節にあった明るい色、カラフルな多種、多用なお花が使われます。そもそも、お香典などの習慣がないことから、故人に対する気持ちをお花に託し贈る事が多いようです。
Deuilのスタイルもいろいろで、いかにも葬儀にもっていくような、十字架の形に花をさしたコンポジションや、白い花を基調としたものもあれば、バラ、チューリップなどの赤やピンクの明るい色をふんだんにつかったもの。アレンジのように形を創り込まれたものから、バケツのようなデコレーションされた入れ物に花を沢山詰めたものまで、それぞれのフローリストによって特徴を持ったいろんなDeuilがあります。
私が経験した中でも強く印象に残っているのは、アコーディオンを弾く人が亡くなったとのことで、クライアントからの依頼でアコーディオンの形に花を創りこんだものをつくったことがあったのですが、花を差す以前に、アコーディオンの形にオアシスを切るのに苦戦していたのを思い出します。いろんなDeuilを見てきましたが、いつも驚かされていたのはその予算です。沢山の花を使うので、当然といえば当然なのですが、だいたい250-300Euro以上、高い時は500Euro位していた覚えがあります。
Deuilとして贈られた花は、お墓の周りに飾り、最終的にはお墓の中に入れるそうです。日本では菊の花など入れ、火葬する習慣はありますが、フランスでは火葬は行わず土葬が基本なので、それぞれが持ち寄った花を、お墓の中に入れるのも文化の違いのひとつと言えるでしょう。
また、これはDeuilほど一般的ではないかもしれませんが、赤ちゃんが生まれた時にはnaissance(ネサーンス)といって、お祝いのお花を自宅や病院に届ける習慣もありますから、フランス人はまさに、ゆりかごから墓場まで、お花に囲まれる習慣があるのかもしれませんね。
日本でも、出産祝いのお花は聞いたことがありますが、香典代わりにお花をもっていく習慣はないと思うので、Deuilはフランスの生活に根付いた素敵な花の習慣のひとつだと思います。
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