花にまつわるさまざまな取材をするようになってから、10年以上になります。生け花やアレンジメント、園芸などの専門家にお話を聞いたり、市場を見たり、生産者の方を訪ねたりするうちに、普段から花に目が向くようになりました。生け花も、園芸もまったく素人ながら、花とつきあい続けてきたのは、取材が楽しいからです。花のある所へ行けば、さまざまな花が姿、色、香りで楽しませてくれます。
この仕事のおかげで、オランダの球根生産地を見て歩く機会もありました。
チューリップやヒヤシンスが一面に咲く広々した畑の美しさは、一本、一本
の花の美しさが生み出すものだと実感しました。その多様なことにも驚き、またオランダの人々が花を家族のようにして暮らしていることも感じました。
世界で最大の花市場、アールスメアの存在は、産業として花や球根の
栽培に力を入れていることだけでなく、人々が花を愛していることを証明しているように思います。
花のことを知るようになってからは、旅をしている時にもふと花が目に入るようになりました。アメリカやヨーロッパの花屋さんやアレンジメントについて
は、花の雑誌などにもよく出ているので、みなさんご存じのことと思います。でも、花はアジアやその他の国々でも、そこに暮らす人たちの生活に欠かせないものです。旅で出会った花のある情景を、お話していきたいと思います。残念ながら、写真は入れられませんが、私の文章力の限りを尽くしますので、イメージをふくらませてください。
今回は、前書きが長かったので、取材での忘れられない思い出を少しだけお話します。
◆春に抱かれた記憶…ストックの温室で房総半島の南端に近い所に、ストックの育種をしている方を訪ねました。育種というのは、新しい品種を作り出す仕事です。目指す花色、草姿を生み出すまでには、長い時間がかかります。ちょうど今頃、2月だったと思います。訪ねた方は、ご自身がつくった品種の種の生産もしていらして、温室では種をとるための花の盛りでした。
その温室に入ったとたん、一面に咲き誇るピンクの花色と、むせかえるようなストックの甘い香りに包まれました。なんて贅沢な空間にいるのだろう、と思いました。お話をうかがいながら、育てている花への愛情が強く感じられて、とてもよい気持ちでした。しかも、帰りには温室の花を一抱え、持たせてくださったのです。帰路の電車の中もストックの香りでいっぱいでした。言うまでもなく、持ち帰ったストックをあちこちに生けた家の中も、春の香りで満たされ、しばらく幸せな気分を味わいました。
こういうことがあるから、花の取材は楽しいんですね。あっ誤解のないように付け足しますが、花をもらうことを目指しているのではないのです。あくまでも、頂き物は、思いがけないオマケです。美しいもの、しかもこの地球で私たちと一緒に生きているものに出会うことで、心が豊かになるのです。
ではまた、次回 |