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HANA見てある記    by 宇佐木やよい




第十九回 ◆神様の名前を持つ木 インド 2003/8/27


 インドはヨーロッパ全域とほぼ同じ面積を持つ大きな国です。北はヒマラヤの山々に接し、南は赤道に近いというだけでなく、東西にも同様の広がりがあります。これだけ大きな国ですから、地方によって植物の様子も異なるはずですが、行く先々で目にする植物もあります。

 ヒマラヤ山麓に行く機会はありませんでしたが、ニューデリー、カルカッタ、バンガロールで目についたのが、街路樹によく使われているアショクの木です。

 初めて見た時は、なんて変な格好をした木なのだろうと思いました。まっすぐに伸びる幹から枝が垂れ、そこに鋸のようにギザギザした縁の、細長い楕円形の葉がいっぱいついています。最初にインドに行ったのは乾期でしたので、水が足りないせいで枝も葉っぱもしなだれているのだと思いました。ところが、あっちこっちに同じ格好をした木があります。周囲の木は元気そうなので、どうも水切れしているわけではないようなのです。

 現地の人に聞いてみると、こういう木だと言います。一般に、植物は太陽に向かって枝を伸ばします。枝垂れ柳、枝垂れ桜などは、そうした形とは異なる姿に惹かれるのだと思います。しかしこのアショクの木は、私が知っている「枝垂れ」という形容のつく植物のような、たおやかな風情がありません。青々としたけっこう大きい葉を一杯につけた枝が、気をつけをしている腕みたいで、しかも真っ直ぐな幹からびっしりと出ています。

 二度目に行って、いろいろ聞いてわかったのですが、これは剪定によって人工的につくられた形だということです。ほうっておけば、四方に広がるらしい。大きな幹が枝分かれしないように、頭を剪定して真っ直ぐに伸ばしているそうです。もともと枝は枝垂れているらしいのですが、幹が四方に伸びればまったく別の樹形になるでしょう。

 インドの人たちは、この木に何か特別の思いを抱いているのかもしれません。アショクという名は、アショカと同じです。インドにはたくさん神様がいて、人々はその名前をもらって自分の名前にするのですが、神様の名前をもらう木はあまり多くないようです。





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◆プロフィール 「 宇佐木やよい 」 フラワージャーナリストという肩書きも持っているフリーライター。 花については共同通信でずっと書いているほか、生け花関連誌、園芸誌などでも執筆。
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