| 第十回 |
◆自然の力 植物の力 北ヨーロッパ |
11/09/2002 |
自然の力 植物の力 北ヨーロッパ
日本の、それも首都圏で育った私の感覚では、植物の育つ過程はかなりゆっくりしています。冬の盛りを過ぎ、日の光が暖かみを増す3月頃から植物は少しずつ活動が活発になり、気温が上がる4月半ば過ぎからどんどん成長していく。春に芽吹く植物は、それだけの時間をかけて緑にむせかえる夏を迎えるのだと思っていました。
日本でも、北では春にさまざまな花が一挙に咲き乱れるとは知っていました。青森で、まだ梅の花が残っている隣で桜がほころび初めているのを見てびっくりしたこともあります。東京なら、梅の花が延々と咲いて、それがすっかり終わってからでないと、桜は咲きません。青森の人が言っていました。春は忙しいのよ、次から次へと花が咲くから、と。梅、桜、りんごが息をつく間もなく咲くのです。
オランダの春も、そんなふうに一度に花が咲きます。ちょうど日本のゴールデンウィークの頃、オランダではチューリップが咲き、さまざまなイベントが始まります。もちろん年によって、咲き具合はまちまちですが、私がこの時期にオランダへ行った年は、ちょっと花が遅かったようです。チューリップが咲く頃といえば、日本ではもう春爛漫という感じですが、オランダではようやく春が来たという風情です。水仙もクロッカスもチューリップも一緒に咲いていて、レンギョウや木蓮も花盛り。滞在していた1週間ほどの間に、やっと芽吹いた柳の新芽がどんどん成長していくのがわかるほどで、一気に春が押し寄せてくることを実感しました。
その時、たまたま北ヨーロッパの人たちと同席する機会がありました。目の前のオランダの春を見ながら、でも例えば冬が長いスウェーデンで、どうやって庭づくりや球根の花を楽しむのだろうと疑問に思ったのです。スウェーデンの人に、ずーっと冬で、雪に閉ざされていて、春の訪れが遅いのに庭の花は咲くのに十分な時間があるのか、というようなことを聞いてみました。彼女は笑ってこう答えてくれました。「ぜーんぜん問題ないわよ。どんどん日が長くなるから、植物もどんどん成長するの」
そう、北欧は白夜があるのでした。春分の日から加速度的に日照時間が長くなり、植物は日の光を浴びる時間が長ければそれだけ成長も早いということなのです。冬の間、雪におおわれていれば逆に土の中が凍ることがなくて、植物はしっかり春への準備をすることができるというのです。言われてみれば、当たり前のような気がしました。植物に対する自分の想像力のなさが、ちょっと恥ずかしい気がしました。
ヨーロッパ、特に北ヨーロッパで園芸植物として楽しまれているものの多くは、南の国々から持ち込まれたものです。レンギョウも木蓮も中国原産ですし、チューリップは中央アジア原産です。改良が重ねられたとはいえ、植物そのものの持つ力があるからこそ、冬の長い北ヨーロッパでも生き抜いてきたのでしょう。北国の植物は、南国とは違った、生命力を見せてくれるように思います。
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