HANA見てある記    by 宇佐木やよい




第十一回 物語の中の花と出会う 12/14/2002

物語の中の花と出会う  

 本を読んでいると、情景描写の中にさまざまな植物が出てきます。見たことのない 植物の名前に出会うと、どんな花なんだろう、どんな葉っぱなんだろう、大きいのか 小さいのか、木なのか草なのか思いを巡らせた記憶があります。不思議なことに、子 どもの頃に読んだおとぎ話に出てきた植物のことをよく覚えています(単なる老化現 象かもしれませんが)。  

ずっと気になっていた植物のひとつがイラクサです。最も印象的なのは、ラプンツェ ルのお話なのですが、正確なタイトルは忘れてしまいました。ラプンツェルのお母さ んは体が弱かったというようなことで、身ごもっている間イラクサのスープを毎日飲 まなければならないのですけれど、イラクサは隣の魔女のうちの庭にしかありません。 イラクサを分けてもらう代わりに、生まれた子どもを魔女にとられてしまうのです。 この後、お話は続くのですが、とにかくイラクサです。どうやら体にいいものらしい のに、どうして魔女の家にしかないのか、というのが疑問でした。そもそもイラクサ は、どういうクサなのか。イラクサは西洋のおとぎ話によく出てくるように思います。  

南仏の知人の家へ行った時、庭の草刈りを手伝うことになりました。あら、シソが いっぱい、と私が思ったのが、実はイラクサだったのです。葉はシソにそっくりなの ですが、茎にはものすごい棘がいっぱいあります。放っておくと繁茂して、棘だらけ なので抜くのも大変、やっかいな雑草だそうです。昔から嫌われもののクサだったの でしょう。本物のイラクサを目にし、子どもの頃からの疑問が解けて、とても嬉しく なりました。できればスープも試してみたかったのですが、知人には相手にしてもら えませんでした。  

もうひとつ、とても気になっていたのがスイカズラです。どうも垣根などに絡まっ ているらしく、花は香りもよいらしい。「スイカ」ズラ、としか読めない私は、しか し垣根にスイカがぶら下がるのはおかしいとも思いました。スイカの畑は見たことが あったのです。これはつい数年前、植物事典でどのようなものか知りました。  

欧米の園芸品種がずいぶん手に入りやすくなって、旅に出なくても、物語の世界で しか出会うことのなかった花や植物に出会う機会が増えました。旅で初めて出会った 植物を特定するのは難しいので、むしろ園芸店や庭園、植物園などで見るほうがわか りやすいかもしれません。実際の植物の姿を知ると、物語の世界も彩り豊かになるの ではないでしょうか。

 
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◆プロフィール 「 宇佐木やよい 」 フラワージャーナリストという肩書きも持っているフリーライター。 花については共同通信でずっと書いているほか、生け花関連誌、園芸誌などでも執筆。
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