HANA見てある記   by 宇佐木やよい


第ニ回 ◆インド編1・牛と花 6/01/2002



 12月にニューデリー、カルカッタを訪ねました。  
 ニューデリーの住宅街では、公園を巡る歩道にいろんな商売の人たちが点々と露天 の店を出していましたが、少年が店番をする花屋さんもありました。庶民が食料品や 衣類、日曜雑貨を買いに行く市場にも、花屋さんがあります。    
 
 この季節はグラジオラスのシーズンらしく、どこの花屋さんでも赤、白、ピンク、 クリーム色のグラジオラスがたくさん並んでいました。ほかにはカーネーション、ガー ベラ。アンスリウムなんかも見かけました。    

 そうした中でも目を引いたのは、華やかに咲くチューベローズです。ニューデリー の周辺で使われている言葉ではラジニガンダというそうです。あんまりきれいなので 欲しくなって、6本買いました。カスミソウ(日本で見るものより花が大きくてまばら でした)を添えて束にして、セロハンで包んでくれましたが、足元はそのまま。日本 円で100円ほど、ミネラルウォーター(1リットル)3本分くらいの値段です。  
 
 できあがった花束を受け取ると、とても香りがよく、いい気持ちになりました。旅 先でも、花は気持ちを豊かにしてくれます。    

 嬉しくて花束を抱いて歩いていたら、向こうから牛がやって来ました。ニューデリー の街をぶらぶらしている牛は、野良牛ではなくて、放牧されている飼い牛だそうです。 よく見てみれば、耳に番号が書いてあったり、首にカウベルをつけているのもいます。 ニューデリーの街には公園がたくさんありますけれど、それほど牛の食べ物が豊富だ とは思えません。    
 
 牛たちは夕方になると、自分でうちへ帰るそうで、私が出会った牛も帰り道だった ようです。その牛が、私のほうへどんどん近づいてきます。彼女(お乳をしぼる牛だ から、雌だと思うのです)の進路から横によけても、私のほうへ来ます。どうやら、 持っていたチューベローズの香りに誘われているらしいのです。    

 おいしそうな香りだと思ったのかもしれませんで、なんだか花の好きな牛に会った みたいで、楽しくなりました。でも、お花屋さんに申し訳ないし、花をなんとか隠し 通して、宿に持って帰りました。

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◆プロフィール 「 宇佐木やよい 」 フラワージャーナリストという肩書きも持っているフリーライター。 花については共同通信でずっと書いているほか、生け花関連誌、園芸誌などでも執筆。
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