HANA見てある記    by 宇佐木やよい




第九回 熱帯雨林と苦いバナナ オーストラリア 10/04/2002

 熱帯雨林というと、インドネシアやアマゾン流域の森を連想します。多様な植物、動物の暮らす熱帯雨林は、地球環境を考える上でも大切な場所となっています。そこに暮らす生物だけでなく、私たちが生きるための酸素を供給してくれる場所でもあることを考えれば、熱帯雨林を守ることは私たちの問題でもあるわけです。

 友人に誘われてオーストラリアに行った時、そこで熱帯雨林を見ることになるとは思っていませんでした。東海岸のかなり北、ということは赤道に近いに場所ということですが、ケアンズから車で3時間ほどだったでしょうか。それは、地球上で最も古い熱帯雨林の一つだということでした。まだ、現在のように大陸が分かれていない時代、ゴンドワナ大陸の頃からある森だそうです。

 太古からあるシュロやさまざまなタイプのヤシ、はるか天空に樹冠を広げる木々。螺旋状の長い葉を垂らしたヤシは、葉の先がまとわりつきます。日本語のガイドさんは、そのヤシの名前を「ちょっと待ってヤシ」と紹介してくれました。本当にその葉が服にひっかかると、ちょっと待って、と袖を引かれたみたいな感じがするのです。高く高くそびえる木には、いろんな蔓植物がまとわりつき、あるいは気根をたらした巨大なガジュマルや、根っこが板状になる木(名前を忘れてしまいました)などもあります。蔓植物の中には、絡みついた植物から栄養をとって、その植物を枯らしてしまう「締め殺しの木」というのもありました。熱帯雨林の木にはランの仲間が着生しています。枝の分かれ目によくついているのですが、ランという植物は、土から生えているものばかりではないということを目の当たりにしました。この熱帯雨林へのツアーは、私にとってはオーストラリアで一番楽しい思い出です。

 熱帯雨林を見に行った帰り、休憩のために車を止めてぶらぶらしていると、ガイドさんが野生のバナナですよ、と小さな木を指さしました。栽培種とは比べものにならないかわいらしい実がなっています。食べられるかどうか聞いてみると、おいしくないと言います。試しに食べてみました。モンキーバナナの細いような感じの実なのに、真ん中にソバの実のような黒い種が入っています。実の大きさから考えたら、とても大きな種です。果肉を少しかじった途端に、口中がしぶーい味でいっぱいになりました。その渋いこと、渋いこと。生まれて初めて経験する渋さに、思わずぺっぺっとお行儀悪い行為に走ってしまったのです。

 空気そのものが緑に染まる熱帯雨林の中に、もう一度行きたいと思います。大きな動物といえばワニくらいしか見なかったのですが、あの緑は、生き物の楽園です。それは、この地球上の熱帯雨林すべてに共通することなのでしょう。

 
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◆プロフィール 「 宇佐木やよい 」 フラワージャーナリストという肩書きも持っているフリーライター。 花については共同通信でずっと書いているほか、生け花関連誌、園芸誌などでも執筆。
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